発散防止抑制装置は、有機溶剤や特定化学物質を扱う現場で、局所排気装置の代替措置として導入が検討される設備です。ダクト工事が難しい建屋や、屋外排気が制限される環境でも対応できる可能性があり、近年注目されています。
一方で、導入には所轄の労働基準監督署長の許可や性能根拠の提示が必要となるため、仕組みや価格相場、メリット・デメリットを正しく理解することが重要です。
発散防止抑制装置とは
発散防止抑制装置とは、有機則や特化則で原則設置が求められる局所排気装置に代わり、作業環境を第一管理区分に維持できる性能を確保することで、設置義務の代替措置として認められる設備です。
吸着装置や分解装置、密閉構造、気流制御などを組み合わせ、有害物質の発散自体を抑制する設計が特徴です。導入する場合は、性能評価や作業環境測定の結果を踏まえ、所轄労働基準監督署長の許可を得る必要があります。単なる換気設備ではなく、発散源対策を重視した管理型の設備といえます。
局所排気装置との違い
局所排気装置は、有害物質を発生源付近で吸引し、ダクトを通じて屋外へ排出する設備です。一方、発散防止抑制装置は、排気に頼るだけでなく、密閉や吸着、分解などにより発散そのものを抑える点が大きな違いです。
局所排気装置は構造や制御風速などが法令で明確に規定されていますが、発散防止抑制装置は性能評価を通じて管理区分を維持できることを証明し、個別に許可を得る必要があります。ダクト工事が困難な現場では有効な選択肢となりますが、設計・管理の難易度は高い傾向にあります。
発散防止抑制装置の価格相場は?
発散防止抑制装置の価格相場は、100万〜200万円程度がひとつの目安です。装置構成(吸着・分解・気流制御・囲い込み等)や処理対象(有機溶剤、特化物のガス・臭気など)、必要処理風量によって金額は上下します。
導入時は本体価格に加え、設置調整、性能確認、必要に応じたダクトの最小工事、消耗品(フィルター等)も考慮が必要です。許可取得に向けた資料作成や測定対応が発生する場合もあるため、総額で見積もることが重要です。
発散防止抑制装置のメリット
発散防止抑制装置は、建屋条件や作業内容によっては局所排気装置より柔軟に導入できる選択肢です。コスト・運用面の利点を整理します。
局所排気装置よりも安く導入できる
発散防止抑制装置は、条件が合えば局所排気装置より初期費用を抑えやすい点が魅力です。局所排気装置はダクト経路の確保や屋外排気、貫通工事、防火・防水処理など建屋側工事が膨らみやすく、総額が上がりがちです。
一方、発散源の密閉や吸着・分解で対策できる設計なら、大掛かりなダクト工事を最小化でき、工期短縮にもつながります。
ただし、対象物質や作業量により必要性能が変わるため、安さだけで選ばず、**性能根拠と維持費(消耗品)**も含めて比較することが重要です。
移動式のタイプを導入できる
発散防止抑制装置には、作業場所に応じて移動できるタイプもあり、レイアウト変更や期間限定作業に対応しやすいのが利点です。固定式の大規模排気設備と比べ、現場の変化に柔軟に追従できます。
ダクト固定が不要な設計であれば、設備更新や工程変更の際も再配置が容易で、将来的な投資リスクを抑えやすい点も評価されています。
ただし、移動式でも性能要件を満たす必要があり、使用条件を明確にした運用管理が不可欠です。
有機則・特化則に対応できる
発散防止抑制装置は、所轄の労働基準監督署長の許可を得ることで、有機則・特化則の代替措置として認められる可能性があります。
作業環境測定で第一管理区分を維持できることを証明できれば、局所排気装置の設置が困難な現場でも法令の趣旨に沿った対策が可能です。
ただし、許可取得には性能評価や管理体制の整備が必須となるため、導入前の計画立案とメーカーの技術支援が重要になります。
発散防止抑制装置のデメリット
発散防止抑制装置は有効な選択肢ですが、導入前に把握すべき課題もあります。費用面と供給体制の観点から解説します。
導入コストが掛かる
価格相場は100万〜200万円程度が目安ですが、これは決して安価とはいえません。さらに、性能確認や作業環境測定、許可取得に伴う手続き費用が発生する場合もあります。
また、吸着材やフィルターなどの消耗品交換が必要な構成では、継続的なランニングコストも考慮しなければなりません。
単純な換気装置とは異なり、導入後の管理体制まで含めた総コストを見積もることが重要です。
提供しているメーカーが少ない
発散防止抑制装置は、一般的な局所排気装置に比べて対応メーカーが限られています。設計ノウハウや許可取得支援の実績がある企業は多くありません。
そのため、選択肢が少なく価格競争が起きにくいという側面があります。また、地域によっては保守対応に時間がかかるケースもあります。
導入を検討する際は、技術力・実績・アフターサポート体制を慎重に確認することが不可欠です。
発散防止抑制装置のおすすめメーカー3選
発散防止抑制装置は、有機則・特化則の代替措置(特例)として検討されるケースもあり、製品だけでなく申請・測定を見据えた支援力が重要です。代表的な3社を紹介します。
株式会社ベリクリーン
ベリクリーンは、「局所排気装置に代わる発散防止抑制装置」としての提案を前面に出しており、有機則対策向けのラインアップ(BAシリーズ)を展開しています。製品ページでは、発散防止抑制装置としての認定(許可番号の明記)に触れており、法令対応を意識した訴求が特徴です。
また、VOC対策として活性炭・HEPA等による処理をうたう機種もあり、ダクト工事を抑えたい現場や、臭気・揮発成分の対策を重視したいケースで検討しやすい構成です。導入時は、対象物質と作業量、必要な管理区分を満たす運用が可能かを前提に、測定・申請の流れまで含めて相談できる体制か確認すると安心です。
株式会社トルネックス
トルネックスは、高性能フィルタを用いた室内排気(ダクト工事不要)を特徴とする「有機溶剤発散防止装置」を案内しており、現場の工事負担を抑えた導入を想定しやすいメーカーです。
局所排気の「屋外排気・ダクト」前提がネックになりやすい建屋でも、設備改修を最小限にして検討できる余地があります。一方で、フィルタの適用範囲や交換運用が安全性に直結するため、対象物質に対する適合性、消耗品コスト、警報・監視の仕組みなどを合わせて確認することが重要です。
ブラザーインダストリアルプリンティング(ピュレックス)
ブラザーインダストリアルプリンティングは、ピュレックス(Purex)ブランドとして、主にインクジェット等で発生する揮発成分の捕集・脱臭を想定した換気装置を展開しています。製品情報では、**揮発した有機溶剤(例:MEK)**の吸引・活性炭フィルタによる吸着、臭気漏れ検知の仕組みなどが説明されています。
また同社は、局所排気装置に代わる「多様な発散防止抑制措置」としての位置づけで導入事例・解説ページも用意しており、特定用途(印刷・インク系工程など)で検討しやすいのが強みです。対象工程が合致する場合は、装置単体の性能だけでなく、申請・測定を前提にした導入手順までセットで確認すると失敗を防げます。

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